広告アカウント移管チェックリスト|代理店切り替え・インハウス化時に失うデータと守るべき設定
広告代理店切り替えやインハウス化時のアカウント移管で失うデータと守れる設定を媒体別に整理。Google広告・Meta広告・LINE広告の権限移行手順、スマート入札リセット対策、移管後90日の安定化フロー、よくあるトラブル対処を実務チェックリストで解説します。
この記事のポイント
- 代理店MCC配下で作られた広告アカウントは切り替え時に持ち出しができず、実質ゼロリセットになるリスクがある。
- ピクセル・オーディエンスリスト・コンバージョン設定の帰属確認は、移管30日前までに完了させることが防御の基本。
- スマート入札は移管後に学習がリセットされ、一般に4〜8週間の不安定期間を前提として計画を立てる必要がある。
- Google広告・Meta広告・LINE広告はそれぞれ引き継げるデータと失うデータが異なり、媒体別の個別対応が不可欠。
- アカウントオーナーシップは自社保有が原則であり、代理店にはアクセス権のみ付与する構造が移管リスクを最小化する。
代理店を切り替える、あるいは広告運用のインハウス化を決断したとき、多くの担当者が直面するのが「アカウントをどう引き継ぐか」という実務課題です。手続き上は単純に見えても、移管の判断を誤ると過去数年分の広告データが消滅し、スマート入札の学習がリセットされ、コンバージョン計測が数週間にわたって断絶するケースが起こります。
この記事では、Google広告・Meta広告(Meta Business Suite)・LINE広告の3媒体を横断し、広告アカウント引き継ぎで失うデータと守れる設定を一覧で整理するとともに、移管30日前から移管後90日までのチェックリストを時系列で解説します。インハウス化を判断する7つの基準をすでに検討済みで、いよいよ移管実務フェーズに入る方を主な読者として想定しています。
1. 代理店切り替え・インハウス化でアカウントに何が起きるか
図1: 自社保有 vs 代理店MCC配下:移管時の帰属構造比較
広告アカウントの移管は「引き継ぎ」のように聞こえますが、アカウントの帰属構造によっては実質的に「新規作成」と変わらない事態が発生します。まず全体リスクを経営レベルで整理しておきます。
「引き継ぎ」と「新規作成」の決定的な違い
広告アカウントの帰属には大きく2つのパターンがあります。
パターンA:自社アカウントに代理店がアクセス権を付与されている場合 アカウント本体は自社所有です。代理店を切り替えてもアカウントは継続利用でき、過去の広告履歴・オーディエンスリスト・コンバージョン設定はすべて保持されます。旧代理店のアクセス権を剥奪し、新担当者に付与するだけで済みます。
パターンB:代理店のGoogle広告マネージャーアカウント(MCC)配下に自社アカウントが作られている場合 アカウントは実質的に代理店資産です。切り替え時に代理店がアクセスを閉じることが多く、自社では過去データにアクセスできなくなります。新規アカウントを作り直すことになり、広告履歴・スマート入札の学習データ・オーディエンスリストはすべてゼロからのスタートになります。
移管後に成果が落ちる3つの主要因
移管後に成果が落ちやすい要因として、実務上は以下の3つが指摘されます。
- スマート入札の学習リセット:アカウント構造の変更やコンバージョン設定の更新が入ると、スマート入札アルゴリズムの学習データが部分的またはゼロから再蓄積されます。入札効率が低下する期間が一定期間続きます。
- オーディエンスリストの喪失・縮小:リターゲティングや類似オーディエンスの母集団となるリストが引き継げない場合、精度の高いターゲティングができなくなります。
- コンバージョン計測の断絶:GTM(Googleタグマネージャー)の権限移行が不完全だと、移管直後にコンバージョンが計測されない期間が生じます。成果は出ていてもデータ上はゼロになるため、スマート入札の学習に誤った信号が入ります。
2. アカウントオーナーシップ:誰が持つべきか
広告アカウント移管問題の根本にあるのがオーナーシップの設計です。誰が親アカウントを持つかによって、移管のコストと引き継げるデータ量が大きく変わります。
Google広告のMCC構造と自社保有パターン
Google広告マネージャーアカウント(MCC)は、複数の広告アカウントを一元管理するための上位構造です。代理店はこのMCCを持ち、複数クライアントのアカウントを束ねて管理します。
理想的な構造は、自社がMCCまたは個別アカウントを直接保有し、代理店にはマネージャーとしてのアクセス権のみを付与する形です。この場合、代理店を変えても自社アカウントはそのまま継続されます。
代理店MCC配下にアカウントを作られた場合でも、Googleのポリシー上は「アカウントの移管申請」が可能なケースがありますが、代理店の合意が必要であり、スムーズに進まないことも少なくないとされています。
Meta Business Suiteのビジネス帰属とピクセル所有権
Meta広告(Meta Business Suite)で重要なのはピクセルとビジネスアセットの帰属です。
- ピクセル(Metaピクセル):自社のBusiness Managerに帰属している場合は、代理店を変えてもピクセルデータは自社のものとして継続利用できます。代理店のBusiness Managerに帰属している場合は、新しいピクセルを設置し直すことになり、過去の計測データは参照できなくなります。
- 広告アカウント:Meta広告の広告アカウントは原則としてBusiness Manager(ビジネスポートフォリオ)に紐づいています。代理店BMに紐づいたアカウントは、切り替え時に代理店が管理権を持っているため、自社での継続利用が難しくなるケースがあります。
代理店MCC管理アカウントに紐づけられているリスク
代理店MCC/BMの下にアカウントが紐づいている状態の主なリスクは以下の通りです。
- アカウントの継続利用に代理店の協力が必要になる
- 解約交渉の場面でアカウントデータが交渉材料になるケースがある
- 移管スケジュールのコントロールを代理店に依存することになる
契約開始前に「広告アカウントはどちらのMCC/BMに紐づけるか」を明示的に合意しておくことが、後のトラブルを防ぐ最も有効な手立てです。
3. 媒体別|移管で失うデータ・守れるデータ一覧
移管の実務では、媒体ごとに引き継げるデータと引き継げないデータが異なります。主要3媒体を横断して整理します。
Google広告:引き継げる設定とオーディエンスの扱い
| 項目 | 自社アカウントの場合 | 代理店MCC配下の場合 |
|---|---|---|
| 広告履歴・レポートデータ | 引き継ぎ可 | 参照不可(アカウントを失う場合) |
| キャンペーン・広告グループ設定 | 引き継ぎ可 | 引き継ぎ不可 |
| オーディエンスリスト(リターゲティング) | 引き継ぎ可(タグが自社サイト設置済みの場合) | 新規蓄積が必要 |
| コンバージョン設定 | 引き継ぎ可(再確認要) | 再設定必要 |
| スマート入札の学習データ | アカウント継続なら保持(設定変更でリセットあり) | リセット |
| カスタマーマッチリスト | 引き継ぎ可(再アップロードで対応) | 再アップロード必要 |
Google広告のリマーケティングタグが自社サイトに設置されていれば、オーディエンスリストは自社アカウントに蓄積し続けます。タグの設置場所とコンバージョン設定の帰属先を事前に確認することが最優先の防御策です。
Meta広告:ピクセルデータとカタログの移管可否
| 項目 | 自社BMの場合 | 代理店BMの場合 |
|---|---|---|
| ピクセルデータ(過去の計測履歴) | 継続利用可 | 新規ピクセルが必要(過去データは参照不可) |
| カスタムオーディエンス | 自社BM内で継続利用可 | 移管不可(再蓄積が必要) |
| 類似オーディエンス | 継続利用可 | 再生成必要 |
| カタログ(商品フィード) | 継続利用可 | 移管申請か再作成 |
| 広告アカウントのパフォーマンス履歴 | 保持 | アカウントごと失う場合あり |
Meta広告の場合、ピクセルの帰属が最大の論点です。Meta Business Suite上の「ビジネスの設定 > データソース > ピクセル」からピクセルIDとBusiness Managerの紐づきを確認します。
LINE広告:LINEタグと広告アカウントの帰属整理
LINE広告はGoogle・Metaに比べてオーナーシップの切り替えが複雑なケースがあります。
| 項目 | 対応方針 |
|---|---|
| 広告アカウント | LINE広告管理画面からメンバー追加・削除で権限整理 |
| LINEタグ | タグの発行元アカウントが自社か代理店かを確認。代理店発行タグの場合は自社で再発行・再設置 |
| コンバージョン設定 | LINEタグに紐づくコンバージョンの再設定が必要な場合がある |
| オーディエンス(LINEオーディエンス) | アカウント継続の場合は保持。新規アカウントの場合は再蓄積 |
LINE広告については、広告アカウントの管理権限が自社にあるかどうかを最初に確認し、代理店担当者の権限整理から着手するのが実務上の定石とされています。
4. 移管前フェーズのチェックリスト(D-30〜D-7)
移管の準備は、遅くとも移管予定日の30日前から始めることが推奨されます。直前に判明した問題へ対処する時間を確保するためです。
アカウントアクセス権・管理者権限の棚卸し手順
全媒体のアクセス権を棚卸しし、引き継ぎ書(スプレッドシート等)に記録します。
- Google広告:「アカウントアクセス」画面でユーザー一覧と権限レベルを確認
- Google広告マネージャーアカウント(MCC):自社アカウントが紐づくMCCを特定し、管理者を確認
- Meta Business Suite:「ビジネスの設定 > ユーザー」でメンバーと権限を確認
- Googleタグマネージャー:「管理 > ユーザー管理」でGTMコンテナへのアクセス権を確認
- Google Analytics 4:「管理 > アカウントのアクセス管理」でGA4プロパティへの権限を確認
- LINE広告:管理画面でメンバー一覧と役割を確認
コンバージョン設定・タグ設定のスナップショット保存
移管後のコンバージョン計測断絶を防ぐため、現行設定を記録しておきます。
- Google広告のコンバージョンアクション一覧をCSVまたはスクリーンショットで保存
- Googleタグマネージャーのコンテナをエクスポート(GTMの「管理 > コンテナをエクスポート」機能を使用)
- Metaピクセルのイベント一覧と計測設定を確認・記録
- GA4のコンバージョンマーク済みイベント一覧を確認
サイトリニューアル時の広告・計測引き継ぎ設計でも解説していますが、コンバージョン設定のスナップショットは移管後の比較ベースとして必須です。アカウント移管と同時にサイトリニューアルが入る場合は特に念入りな記録が求められます。
オーディエンスリスト・除外リストのエクスポートと確認
- Google広告のオーディエンスリスト一覧を確認(30日・90日・180日・365日の各リスト)
- 除外キーワードリストをエクスポート
- Meta広告のカスタムオーディエンスリスト一覧を確認(特にウェブサイトオーディエンスとカスタマーリスト)
- カスタマーマッチ用のメールリストを自社で保有しているかを確認
5. 移管実行フェーズのチェックリスト(移管当日〜D+7)
権限の移譲はできる限り段階的に行い、計測が断絶しないよう確認を重ねながら進めます。旧代理店のアクセスを削除するのは、新担当者への引き継ぎが完全に完了してからが原則です。
Google広告:MCC紐づけ変更とGTM権限引き渡し
- 自社アカウントが代理店MCCにリンクされている場合は「リンクを解除」し、自社MCCまたは単独アカウントに移行
- 新担当者(インハウス担当または新代理店)に「管理者」権限を付与
- 旧代理店のユーザーアクセスを削除(引き継ぎ書の完成を確認してから実行)
- GTMコンテナに新担当者を「管理者」として追加し、旧担当者を削除
- GTMのタグが正常に動作しているかプレビューモードで確認
Meta広告:ビジネスアセット移管の実操作
- ピクセルが自社Business Managerに帰属していることを確認
- 代理店に「パートナー」としてのアクセスが付与されている場合は適切なタイミングで削除
- 新担当者または新代理店のBusiness Manager IDを確認し、パートナーとして招待
- 広告アカウントのユーザー権限を更新(旧代理店削除、新担当者追加)
- カタログのアクセス権も同様に更新
GTM・GA4のアクセス権移行とコンバージョン再確認
- GA4のアカウントとプロパティに新担当者を追加(「閲覧者」ではなく「編集者」以上の権限)
- GA4のコンバージョンイベント一覧が移管前のスナップショットと一致しているかを確認
- Google広告とGA4のリンク設定が正常であることを確認(「リンク済みアカウント」欄)
- 移管後24〜48時間以内にコンバージョンがレポートに表示されているかを確認
6. 移管後の安定化チェックリスト(D+7〜D+90)
図2: 移管後スマート入札の学習リセットと回復フェーズ
移管が完了しても、安定化には一定の期間が必要です。特にスマート入札を活用しているアカウントでは、移管後数週間の注意深い観察が求められます。
スマート入札の学習リセット期間の目安と対処
スマート入札(目標コンバージョン単価・目標広告費用対効果・拡張クリック単価など)は、コンバージョンデータを学習することで精度を上げます。アカウント構造の変更やコンバージョン設定の更新が入ると、学習がリセットされます。
Googleの公式ヘルプによれば、スマート入札の学習期間は一般に1〜4週間とされており、コンバージョン数が少ないアカウントほど安定までの期間が長くなる傾向があります。移管後の実務的な目安として、4〜8週間は基準値を下回るパフォーマンスが続くことを前提に、予算と目標値の計画を設計するのが定石とされています。
スマート自動入札の学習期間を短縮するマイクロCV設計で解説するように、メインのコンバージョン(購入・問い合わせ等)に加えてセッション継続・スクロール等のマイクロコンバージョンを設定してデータ量を確保する方法が、学習リセットへの対処として有効とされています。
- 移管後の目標CPAまたは目標ROASを移管前の実績値より余裕を持って設定(実績値の1.2〜1.5倍程度が目安として言及されることが多い)
- 移管後4週間は週次でCPA・CVRをモニタリング
- 急激な予算増額は学習の不安定要因になるため、段階的に行う
コンバージョン数が急変した場合の診断フロー
移管後にコンバージョン数が急変(激増・激減)した場合は、以下の順で診断します。
- タグの二重設置を確認:GTMプレビューモードとGoogleのタグ診断ツールを使い、コンバージョンタグが複数設置されていないかを確認
- GA4とGoogle広告のリンク状態を確認:インポートコンバージョンを使用している場合、リンクが切れていないかを確認
- Metaピクセルのイベント重複を確認:Meta Events Manager上でイベントが重複カウントされていないかを確認
- 自然変動との切り分け:移管前後の同期間(前月比・前年比)と比較し、季節変動・競合変化との切り分けを行う
移管後のKPI基準値設定と経営報告の組み立て方
移管後90日間は「安定化フェーズ」と位置づけ、KPIの基準値を設定し直すことが重要です。
- 移管前30日間のCPA・CVR・CPC・CTRを基準値として記録
- 移管後30・60・90日間の各指標を基準値と比較する週次レポートを設計
- 移管後のパフォーマンス変動の原因(入札学習・オーディエンス縮小・設定変更)を要因分解して報告に含める
インハウス広告の経営報告設計では、移管後の不安定期間を経営層に適切に説明するための報告フレームについて解説しています。単なる数字の羅列ではなく、変動の背景要因を可視化することが、移管後の評価を正確に行う上で不可欠です。
7. よくあるトラブルと先手対策
図3: コンバージョン数急変時の4ステップ診断フロー
移管現場で頻発するトラブルパターンを整理し、事前対処の考え方を示します。
コンバージョンタグが二重設置されていた場合の対処
代理店が独自にタグを設置し、自社でも別途GTMでタグを設置していた場合、移管後に二重計測が発覚するケースがあります。移管前後でコンバージョン数が大きく乖離し、スマート入札の学習データに誤った信号が入ります。
対処の流れ:
- Googleタグアシスタント(Chrome拡張)でサイト上のタグ発火状況を確認
- 重複しているタグを特定し、どちらを残すかを決定(GTM管理のタグに一本化するのが一般的)
- 不要なタグをGTMから削除またはトリガーを無効化
- 削除後24〜48時間でコンバージョン数の変化を確認
オーディエンスリストが消えた・使えなくなったケース
代理店MCC配下のアカウントをごと失った場合、オーディエンスリストの再蓄積が必要になります。また、自社アカウントでもリターゲティングタグが一時的に外れていた期間があると、その間のユーザーがリストから漏れています。
対処の方向性:
- カスタマーマッチリスト(メール・電話番号のアップロードリスト)は自社で保有できるため、移管直後に再アップロードを優先する
- サイト訪問リストは30・90・180・365日を段階的に再蓄積。初期は幅広のオーディエンスで補完しながら、蓄積されるにつれて精度を上げていく計画を立てる
スマート入札の目標値を移管前後でどう引き継ぐか
移管後に新しいアカウントや変更後の設定でスマート入札を開始する場合、目標値(目標CPA・目標ROAS)の初期設定が問題になります。
一般的に推奨される考え方は以下の通りです。
- 移管前のCPA・ROASの実績を記録し、それを初期値の参考値として使用する
- 学習リセット直後は入札が不安定なため、目標CPAは移管前実績より余裕を持たせた値から開始する
- 4週間ごとに目標値を見直し、段階的に本来の目標値に近づける
インハウス化後も代理店を使い続けるハイブリッド運用の観点から言えば、移管後の不安定期間に限って外部サポートを活用するのも、リスクを抑える有効な選択肢の一つです。また、新たな代理店を選定する際の費用体系については、広告代理店の手数料体系を正しく比較するが参考になります。
よくある質問
Q:代理店切り替え時、Google広告の過去の広告履歴やデータは引き継げますか?
自社が広告アカウントを保有している場合、過去のデータはアカウントに紐づいているため、代理店が変わっても引き継げます。一方、代理店のGoogle広告マネージャーアカウント(MCC)配下で作られたアカウントの場合、切り替え時にアカウント自体を持ち出せないケースがあり、実質的にゼロリセットになるリスクがあります。移管前に「アカウントの管理者は誰か・MCCの親はどこか」を必ず確認してください。
Q:広告アカウントのオーナーシップは代理店と自社どちらが持つべきですか?
原則として自社が親アカウント(Google広告では個別アカウントまたはMCC、Meta広告ではBusiness Manager)を保有し、代理店にはアクセス権のみを付与する形が推奨されます。代理店MCC配下にアカウントを作ると、切り替え時にアカウントごと失うリスクがあるためです。契約開始前にアカウントの帰属先を明記することが、後のトラブルを防ぐ最も有効な手段です。
Q:Meta広告のピクセルデータは代理店切り替え後も引き続き使えますか?
ピクセルの帰属先が自社のBusiness Managerに紐づいていれば、代理店が変わってもピクセルデータは継続して利用できます。一方、代理店のBusiness Managerに帰属している場合は、切り替え時に新しいピクセルを設置し直すことになり、過去の計測データは参照できなくなります。Meta Business Suite上の「ビジネスの設定 > データソース > ピクセル」からピクセルの帰属先を事前に確認してください。
Q:移管後にスマート入札の成果が落ちるのはなぜですか?どう対処しますか?
スマート入札はコンバージョン実績の蓄積を学習ソースとするため、アカウント構造の変更やコンバージョン設定の更新が入ると学習がリセットされます。移管後は一般に4〜8週間の不安定期間が発生すると見ておくのが実務上の目安です。対処としては、目標CPAを移管前実績より余裕を持った初期値に設定しつつ、マイクロCVを設計してデータ量を確保しながら段階的に本来の目標値に戻す方法が有効とされています。
広告アカウントの移管は、準備と手順を正しく踏めばリスクを最小化できます。ただし、アカウントオーナーシップの構造確認・媒体別のデータ保全・移管後の安定化設計という3つの軸を並行して進める必要があり、実務量は少なくありません。真策堂では、代理店切り替えやインハウス化を検討・実行中のマーケティング担当者・経営者の方に向けて、移管設計から安定化フェーズの運用サポートまで相談を受け付けています。「何から手をつければよいかわからない」「移管直前に確認したい」という段階でもお気軽にご連絡ください。
切り替え前に見直したい契約条項(解約予告・アカウント帰属・CRの権利)
アカウントの帰属は第2章で整理しましたが、実際の切り替えでは契約書に何が書いてあるかが先に効いてくることが多いと思います。確認しておきたいのは主に次の3つです。
- 解約予告期間と最低契約期間:「○か月前までに書面で通知」といった条項がある場合、第4章のD-30から逆算するより前に通知期限が来ていることがある。移管日から逆算して、まず解約通知の期限を押さえておくのが安全かなと
- アカウント・データの帰属条項:「運用で作成したアカウント・設定・レポートの権利はどちらにあるか」「契約終了時に引き渡す義務があるか」。ここが空白だと、第2章で触れたような交渉の論点になりやすい
- CR・LPの著作権と利用範囲:代理店が制作したバナー・動画・LPを、契約終了後も自社で使えるかどうか。制作物の権利が代理店側に残る契約だと、配信中のCRを差し替える必要が出てくる
条項があいまいなときは、解約を伝える前に「引き渡し範囲」を文面で確認しておくと、その後のやり取りがスムーズになると思います。
旧代理店に依頼する引き継ぎ資料の中身
アカウントを自社で持っていても、「なぜその設定になっているのか」はアカウントの中に残っていないことが多いです。新しい担当者が同じ失敗を繰り返さないように、旧代理店には次のような資料を依頼しておくと良いかなと。
| 資料 | 引き継ぎたい理由 |
|---|---|
| 運用・変更履歴のログ(入札戦略や予算を変えた日と理由) | 変更履歴画面では「何を変えたか」は追えるが、「なぜ変えたか」は残らない |
| 過去のテスト結果(CR・LP・訴求のABテスト) | 効かなかった訴求を再テストするムダを減らせる |
| 除外設定の判断基準 | 除外キーワードやプレースメントを「なぜ外したか」がわかる |
| 月次レポートの原本と定義 | CPAやCVの定義が新体制と違うと、第6章の基準値比較がずれる |
| 入稿用の元データ(CRの元ファイル、広告文一覧) | 差し替えや再入稿がすぐにできる |
依頼するタイミングは、解約を伝えた直後より契約期間の内側で、まだ協力関係があるうちにリストで渡しておく方が進みやすいと思います。全部そろわなくても、「何がもらえて、何がもらえなかったか」を記録しておくだけで、新体制側の前提が固まりやすくなります。
広告費の請求・支払い方法の切り替え
見落としやすいのが媒体費の支払いルートです。代理店経由で運用している場合、媒体費を代理店が立て替えて、手数料と合わせて請求してくる形になっていることがあります。このまま権限だけを移すと、次のような問題が起こりえます。
- 媒体側のお支払い設定が代理店の請求アカウント(Google広告なら代理店側のお支払いプロファイル)のままで、切り替えと同時に配信が止まる
- 移管した月の媒体費を、旧代理店と自社(または新代理店)のどちらが負担するのかがあいまいになる
- 代理店側の請求書発行を前提にした月額請求(後払い)から、自社のクレジットカード払いなどに変わって、社内の経理フローが合わなくなる
対策としては、
- 各媒体の「お支払い設定」で、請求先が誰の名義になっているかを確認
- 自社名義のお支払い情報を登録するタイミングを、権限移行の日と合わせる
- 最終月の媒体費をどちらが請求・負担するかを、旧代理店と文面で合意
- 支払い方法が変わる場合は、経理担当に事前に共有しておく
支払い設定の切り替えは媒体ごとに手順や審査の有無が違うので、各媒体のヘルプで最新の手順を確認しながら進めるのが確実かなと思います。配信を止めずに切り替えられるかどうかは、アカウント設定よりもこの支払いまわりで決まることも少なくない印象です。
新しい代理店を選ぶときに見ておきたいポイント
切り替えの手順が固まっても、次の代理店選びで同じ問題を繰り返すと意味がないので、選定の段階で確認しておきたいことを整理しておきます。
- アカウントの帰属を最初に確認する:提案の段階で「広告アカウントは自社名義で作るか(または既存の自社アカウントを使うか)」「代理店に渡すのはアクセス権だけか」を聞いておく。ここをはっきり答えられるかどうかで、次に切り替えるときの手間がかなり変わると思う
- Googleパートナー認定の見方:Google広告の代理店選びでは「Google Partner」のバッジを目安にすることが多いですが、これはGoogleが決めたプログラムの要件(運用実績や認定資格など)を満たしているという意味です。自社の業種や予算規模に合っているかどうかまでは保証されないので、バッジは足切りの目安くらいに考えて、担当者の経験や体制は別に確認した方が良いかなと
- 担当者と体制:営業担当と実際の運用担当が別のケースは多いです。誰がどのくらいの頻度で手を入れるのか、担当が代わったときにどう引き継ぐのかは聞いておきたいところ
- レポートの定義:CVやCPAの定義が今と違うと、切り替え前後の比較ができなくなります。前の章で触れた基準値をそのまま使えるかどうかは、契約前にすり合わせておくと安心だと思う
手数料体系の比較だけで決めると、こうした運用面の違いが後から見えてくることがあるので、見積もりと一緒に確認しておくのがおすすめです。
切り替え期間中の「運用の空白」を防ぐ役割分担
解約を伝えてから新体制が動き出すまでの期間は、誰が運用の責任を持っているのかがあいまいになりやすいです。旧代理店はもう積極的には動かず、新代理店はまだ権限がない、という状態で配信だけが続くことがあります。
この空白を防ぐために、次のようなことを決めておくと良いかなと思います。
- 旧代理店の最終運用日:いつまで入札・予算・CRの調整をしてもらうのか、日付で決める
- 変更の凍結期間:切り替えの前後は、キャンペーンの構造変更や大きな予算変更は止めておく。止めておかないと、成果が変わったときに移管のせいなのか設定変更のせいなのかがわからなくなる
- 緊急時の判断者:配信停止や不承認、予算の消化ペースの異常が起きたときに、誰が止める・直すのかを決めておく。社内に判断できる人が1人いるだけでもだいぶ違うと思う
- 新代理店が動き始める日:権限を付与した日と、実際に運用を始める日がずれることもあるので、「この日から責任を持つ」をはっきりさせておく
管理画面の変更履歴を見ればあとで誰が何をしたかは追えますが、トラブルが起きたその場で誰も動かない、というのが一番もったいないパターンかなと。
新しい代理店の「立て直し提案」の受け止め方
新しい代理店から最初に出てくる提案は、「アカウント構造を一から作り直しましょう」というものになりがちです。前の代理店の設定を見直すこと自体は大事ですが、全部まとめて作り直すと、スマート入札の学習や過去データとの比較がまた振り出しに戻ってしまいます。
提案を受け取ったときは、次のような点を聞いてみると判断しやすいと思います。
- 今の構造のどこに問題があると見ているのか(根拠になるデータは何か)
- 作り直すものと、そのまま残すものを分けられるか
- 変更を一度にやるのか、段階に分けるのか。段階に分けるなら、それぞれの効果をどう確かめるのか
- 変更してから成果が落ちたとき、元に戻せるようにしておくか
いきなり大きく作り直すより、まず現状を診断してもらって、効果が見込める部分から順に手を入れてもらう方が、切り替え直後の不安定な時期を長引かせずに済むかなと思います。
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